恋口の切りかた
「ええと、私は留玖です」

怖ず怖ずと留玖が名乗って、「はあ!? おつるぎ様!?」と帯刀が声を上げ、俺を凄い目で睨んだ。

つうか、何度も顔つき合わせて、隼人も「おつるぎ様」と呼んだりしてたのに、こいつ未だに気づいてなかったのかよ。

「とにかく、この人は白輝血ではありませんっ」

留玖が言い張って、帯刀が困惑したように俺を見た。

俺も無言で軽く頷く。

「はあ、左様ですか。……ご無事で何よりです」

帯刀は納得したようなしてないような様子だったが、そう言って引き下がり、他の同心たちの指揮に戻った。

目を細めて留玖を見下ろして、ふふっと与一が微笑を作った。

「ありがとな」

隻眼の美丈夫は留玖の耳元に整った唇を寄せてそう囁いて──

留玖がうつむいた。
心なしか、その頬が赤く染まっているのが、部屋の灯りと明け始めた外の光に照らされてわかった。


……え?

る、留玖?


俺の中で言い知れぬ不安が湧き起こった。
< 1,189 / 2,446 >

この作品をシェア

pagetop