恋口の切りかた
そんな──



「隼人さん……」

声が震えた。


「その部屋ならば、この店に踏み込んですぐに中を改めたが──その状態だった」

私の後ろから座敷を覗き込んで、神崎が言った。


「おい! 隼人っ!」

突っ立っていた円士郎が、隼人に駆け寄り、血だまりの中に膝を突いて隼人を抱き起こして体を揺すった。

「やめろ、その者はもう──」

「黙れッ」

何かを言いかけた神崎を遮って円士郎が叫んだ。

「ふざけんな! 俺は死ぬなって言っただろうが!」

円士郎の悲鳴に近い声が響いて──




小さく、うめき声がした。




円士郎の腕の中で、侍が身じろぎをする。

「へっ……?」

円士郎が間抜けな声を上げて、隼人を見下ろして、

「他人の話を聞かんか! その者はもう、手当てを施してあるし医者も呼びに行かせた。
左腕の怪我が酷いが、命に別状はないから安心しろと言おうとしたんだ! まったく、怪我人を下手に動かすな」

神崎が嘆息と共にそう言った。

血に濡れてわからなかったが、よくよく見ると隼人の左腕や全身至る所には止血のためと思われる布が巻かれていた。
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