恋口の切りかた
「ワシは、ワスれられナイ、アのスバラシイ、コウケイが」

すっかり真っ黒に焼けただれ、くずおれた兵五郎の死体の横で、男は嬉々として語った。

「そしテ、センセイも、マタ、あのコウケイニ、とりツカれタ」

「そんな──馬鹿な」

与一が凍りついた。


そうだ。

与一がいくら人形斎に対して恩を感じていて、信じられなくても、

たとえ今、この城下で事件を起こしていたのが、人形斎本人ではなかったとしても、


かつて五年の昔に、人形斎なる男自身も伊羽青文の命で、その復讐に手を貸した事実はやはり動かないのだ。


「ナガサキで、イコクの、ギジュツを、まなンダ、センセイは、ヒルマにシカ、ツカエない、『アマテラス』とちがっテ、ヨルにモ、つかエル、『ゲツドク』の、ハツメイに、シンケツを、ソソいダ」


五年前にはまだ確立されておらず、伊羽青文も名前だけしか知らないと言っていた「月読」。

人形斎は五年前の時点でもその構想だけは持っていた、ということなのだろう。


「ココロザシ、なかバで、タオレた、センセイの、ムネンのオモイを、ヒキついデ、ワシはツイに、センセイも、タドリつけナカっタ、そのセイホウに、タドリついタ」


燃え尽き、真っ黒な死体となった白輝血の兵五郎に、鬼之介が近くの道端にあったムシロを見つけてきて被せた。

「このオトコはナ」

そちらに顔を動かして、狐面は言った。

「ヤミガラスとかイウ、トウゾクをツウジて、ニンギョウサイの、コトをキイテ、ワシにセッショク、シテきタ」

以前鬼之介も語ったように、カラクリを作るのには金がかかる。

資金が欲しかった狐面は人形斎の名を名乗り、
再び城下に舞い戻り、
白輝血の連中と手を組んで、
再び城下に天照を蘇らせ、月読を完成させたのだという。
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