恋口の切りかた
「春先に起きた事件も、てめえの仕業だな?」

俺はそう言って、目の前の同心見習いの若者を一応気にして、遊水のほうをチラッとうかがったが、彼は特に何の反応も示さなかった。

どうやらこの場で口にするのは構わないようだ。

「虎鶫のシマの女郎ばかりを狙った怪死事件のことだよ」

「な……何ですか、それは!?」

そんな事件は知らないとばかりに志津摩が目を見張った。

それはそうだろう。
この操り屋が、銀治郎に頼まれて裏でもみ消していた事件だ。


「サイショはナ、ニンギョウヲ、モヤシてミタ、のダヨ」


狐面は、不気味にそんなことを言った。


話によると──


復活させた天照の威力を試すため、この狐面の男は自らの手で人間そっくりにこしらえた人形を燃やした。

白輝血の連中も足がつくのを恐れ、最初は実際に派手に人間を殺す気はなく、焼いた人形で威力を示して、主に脅しに使う気だったらしい。

しかし──

いくら人間に似せて作ろうと、この狐面にとって、脳裏に焼け付いた人間が燃える光景と人形が燃える様とは程遠く、

やがて、信じがたいことにこの男は──


「ワシは、ヒトのシタイを、ツカッテ、ニンゲン、ソックリの、ニンギョウを、ツクろうとシタ」
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