恋口の切りかた
与一がニヤッとした。

「俺は何もしてねェぜ、なァ?」

なんて、私に言ってくる。


ウソつきぃ。


凄いことした!

この人、私に凄いことしたっ!


私は必死に記憶を追い出そうとしながら、与一の整った顔を睨みつけた。


「勝手に女物の着物に着替えさせたりはしたけどな」


そこじゃない!

いや、それも十分凄いことされた気がするけど……


霧夜の正体が与一だと知った時にも思ったけれど、

考えてみたら、女形の与一ならば女性の着物の着付けに通じているのも、足の出し方などの所作に通じているのも当然だったのだ。


「かわいい、かわいい」と、未だに女物の小袖姿の私を眺めて与一は笑って、

「これだけかわいいんだから、たまには女の格好をしな」

昨日の昼間、鈴乃森座で私に言ったのと同じような言葉を繰り返した。


私は本当に顔から湯気が出るんじゃないかと思った。

ゆでだこみたいに真っ赤になってしまっているに違いなかった。


与一は続けて、不審そうにそんな私に視線を注いでいる円士郎に

「円士郎様もよく似合ってると思うだろ?」

そんなことを言って、私はどきんとした。
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