恋口の切りかた
私はほっぺたが赤くなるのを感じながらちょっとだけ下を向いて、

それを眺めていた円士郎が不審そうな顔で私を覗き込んだ。


「なあ、留玖。ひょっとして与一と何かあったのか?」

「えっ?」

「さらわれてる間に、こいつに何かされたんじゃねーだろな」


何かされた──って……


その言葉で、私の脳裏にはこの侠客に唇を舐められた時の記憶と感触とがまざまざと浮かんで──


ボッという音が聞こえた気がして、一気に顔が熱を帯びた。


「え? 留玖?」

唇を押さえてしゃがみ込んだ私を見て、円士郎が狼狽した様子になった。

「な……何かあったのか?」

「何もない! 何もあるわけないよっ」

私は取れそうになるくらいに、頭をぶんぶん振った。
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