恋口の切りかた
衝撃を受けて、俺は腕の中の少女をぼう然と見つめた。

それから、



留玖は結城家に迎え入れられたことで、

俺に対して恩義を感じている。

引け目を感じている。

俺が強要すれば、拒まないだろう──。



かつて親父殿や母上から言われた言葉の意味を、

理解したつもりで、何もわかっていなかったのだと思い知った。




初めて、俺は自分の勘違いに気づいて、


留玖にこんな言葉を口にさせた己を恥じた。




彼女のこの受け入れの言葉は、泣き叫んで拒絶されるよりも遙かに強力に俺の行動をつなぎ止め、のぼせきって湯のように煮えていた脳味噌を現実に引き戻した。


何よりも愛おしい存在に──俺は何をさせようとしていた──!?


己の浅はかな行為に俺は凍りついて、


だから、


「……あの、それにね……その……嫌じゃないから……」


留玖が続けて口にした言葉は頭に入って来なかった。


「私、私は……エンのこと──」

「悪かった……留玖」


何か言いかけていた留玖を遮って、俺は謝った。
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