恋口の切りかた
【円】
留玖に思いを告げたことで、俺は浮かれていた。
これでいくらなんでも俺の気持ちは伝わっただろう。
そう安心して、
隼人たちの祝言も終わり、九月に入ったある日──
「って、どうなってんだよ!?」
町を歩いていた俺は、とんでもない光景を目撃した。
そこにいたのは留玖と与一で──
楽しそうに笑う着流し姿の与一と照れたように頬を染めて話しながら、留玖は二人で反物屋に入って行ったのだ。
どういうことだ!?
俺は屋敷に戻ってきた留玖を捕まえて問いただしたのだが、留玖は顔を赤くして話をはぐらかすし──
それからというもの、屋敷の中でも何だかやたらと俺を避けているような素振りを見せるし──
気が気ではないまま、九月も終わりに近づいた頃、
二人きりで話がしたいと言って、俺を町歩きに誘ってきたのは──留玖ではなく、俺の許嫁殿だった。
「円士郎様と折り入ってお話があります。お屋敷の中ではちょっと……」
そう言う風佳の目は真剣で、さすがに俺も断れるような雰囲気ではなかった。
これまで決して俺に積極的に話しかけてくることはなかった風佳が言い出したということもあって、
気になった俺は、屋敷に遊びに来ていた風佳を連れ出して
初めて彼女と二人きりで町へと出かけた。