恋口の切りかた
「留玖──」


マズい。


本気で理性が飛ぶ──


俺は留玖の肩をつかんで、何とか自分から遠ざけて

ぎりぎりで踏み止まった。


「お前なァ──」

大きく息を吐いて、少女の顔を見上げた。

「男になんてこと言うんだよ……」

「へ……?」

不思議そうに間抜けな声を上げる姿も、何もかもが可愛い。愛おしい。

乱れた着物から覗く白い肌を、俺はそっと着物の前を合わせて隠してやって、


「今は──まだ、駄目だ」


留玖と、遊び女を相手にするような男女の関係にはなりたくない。

俺は自分自身に何度も言い聞かせて、


「でも……」

ちょっと困ったように俺の顔を見上げる留玖に顔を近づけて、ニヤッと笑った。

「その代わり──お前、刺身って知ってる?」

「おさしみ?」

留玖は俺の予想通りの、無垢でかわいい反応を返してきた。

「お魚の?」

「いーや」

俺は笑みを浮かべたまま留玖の顎に手を掛けて、

「──これのこと」

唇を深く重ねた。
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