恋口の切りかた
「そんな……恐ろしいこと──」

干上がった喉から、かろうじてそれだけ絞り出した私に、清十郎はなおも凍える微笑を向けて、

「仲が悪いのならば留玖殿の兄上にやってもらおうかと思ったが、五年前の雨宮家の時のように返り討ちにされたんじゃ意味がないからな」

「えっ……」

「もっと別の者に頼むことにするよ」

それから清十郎は私の頬に手をかけて、

「留玖殿も、このことは黙っていてくれるな?」

と言った。

その手は温かかったけれど、触れられた場所から氷になってしまうような気がした。

「はい……」

震えながら私が頷くと、清十郎は微笑んで「ありがとう」と言って、

頬から手を離し、私の手を握った。

体がびくっと跳ねて、私は咄嗟に彼から離れようとしたのだけれど、清十郎はしっかり手を握って逃がしてくれなかった。

「すまなかった。長く立ち話をして──すっかり体が冷えてしまったな」

彼は私の手を握ったままそう言って、


確かにこの季節、夜の冷え込みは激しくなってきていて、稽古で温まっていた体は既に冷え切っていた。

でもそれは、川辺の夜気のせいだけでもないように思えた。


清十郎は手にしていた自分の羽織を私の肩にかけて、

「屋敷の近くまで貸そう。送って行くよ」

と言った。


その態度に何だか落ち着かないものを感じて、私は首を横に振って、

「いえ、結構です」

わざと敬語を使って答えたのだけれど──
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