恋口の切りかた
「奸臣……」
私はぼう然とその言葉を繰り返した。
腕に罪人の刺青がある得体の知れない者──
間違いない。
私と青文が襲撃を受けた夜、青文の顔を見て姿を消した、あの鎖鎌の男だ……!
「気になって調べたら、伊羽青文という男、人前に現れた十年前まで誰もその存在を知らないというじゃないか。
しかも、跡目を継いだ経緯もあまりに不自然だった。
これは──見過ごすわけにはゆかない。
むしろ、これまでどうして誰も何も言わず、そんな男を執政として認めてきたのかが不思議なくらいだな」
清十郎は実に冷ややかにそう語って、
私は何か言い返して、否定したかったけれど──
ここでうかつな発言をすることは、そのまま伊羽家と結城家の繋がりを知られることになるのだと思ってできなかった。
「このような奸臣をのうのうと執政の座に置いておくわけにはゆかない。
皆の前で覆面の下の素顔を暴いて、告発しても良いが──それではこの国の家中全体の風評を貶めることにもなりかねない。
だから──」
清十郎は、端正な顔に背筋が凍るような笑みを作った。
「そんな奸物は、誰か腕の立つ者に秘密裏に討たせてしまうのが良いと思ったんだ」
五年前の伊羽家と雨宮家の事件を再現するかのような言葉に、私は戦慄した。
私はぼう然とその言葉を繰り返した。
腕に罪人の刺青がある得体の知れない者──
間違いない。
私と青文が襲撃を受けた夜、青文の顔を見て姿を消した、あの鎖鎌の男だ……!
「気になって調べたら、伊羽青文という男、人前に現れた十年前まで誰もその存在を知らないというじゃないか。
しかも、跡目を継いだ経緯もあまりに不自然だった。
これは──見過ごすわけにはゆかない。
むしろ、これまでどうして誰も何も言わず、そんな男を執政として認めてきたのかが不思議なくらいだな」
清十郎は実に冷ややかにそう語って、
私は何か言い返して、否定したかったけれど──
ここでうかつな発言をすることは、そのまま伊羽家と結城家の繋がりを知られることになるのだと思ってできなかった。
「このような奸臣をのうのうと執政の座に置いておくわけにはゆかない。
皆の前で覆面の下の素顔を暴いて、告発しても良いが──それではこの国の家中全体の風評を貶めることにもなりかねない。
だから──」
清十郎は、端正な顔に背筋が凍るような笑みを作った。
「そんな奸物は、誰か腕の立つ者に秘密裏に討たせてしまうのが良いと思ったんだ」
五年前の伊羽家と雨宮家の事件を再現するかのような言葉に、私は戦慄した。