恋口の切りかた
「この季節だったよな」

そう言う円士郎から頭上の花に視線を移して、私は再び彼の胸に頭を預けて、

「お前、きったねーガキでよ、女だったなんて思いもしなかった」

「ヒドい……!」

私はぷうっとふくれた。

「エンだって野良犬みたいで、偉いご身分の若様には全然見えなかったよ」

私が言うと彼が笑う震動が伝わってきて、私は幸せな安心感に包まれた。

「まあ、可愛い奴だとは思ったけどな」

円士郎はそう言って、
少しだけ身を離して、私の顔を正面から覗き込んで、


「こんなに綺麗になるなんてな」


そんなことを言われて、私の胸はまた大きな音を立てた。


円士郎が顔を寄せて、
唇を優しく重ねてくれて、


私のほっぺたを温かい水がこぼれ落ちていく。


ああ──

また、この人は私の心を彼への思いでこんなにいっぱいにして、あふれさせてくれる。


「エン、好き……」


私はあふれて止まらない気持ちを一生懸命口にして、


舞い散る桜の花びらの中で、

何度も何度も、優しい口づけを交わし合って、


私を抱え込んだまま円士郎が仰向けに寝転がって、二人で桜の木の下に倒れ込んで

自分が溶けて消えていくような気がしながら、

私は円士郎の胸の上に頭を乗っけて、
彼の腕の中で、真上から降ってくる薄紅色の花びらを見上げていた。
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