恋口の切りかた
「留玖の腕など関係ない。

奥からの要望など、結城家には一言で突っぱねる権限がいくらでもある」


「え……?」


「円士郎」


親父殿は静かに俺の目を見据えて、

この話とは全く関係なさそうなことを尋ねた。


「留玖の口から、嫁になりたいという言葉は聞き出せたか?」


「え?」


俺はどうして突然、この流れでこの問いが親父殿の口に上るのか理解できないまま、

「いや。まだだけどよ……」

正直に答えて、

「そうか」と親父殿は厳しい顔つきで瞑目した。


「ならば、留玖をお前の正妻にする話はもう忘れろ。なかったことにする」


「な──!?」


俺は思わず立ち上がった。


「なんでそうなるんだよ!?
確かに、最初は一年って約束だったが──当面は腰を据えて留玖の相手をしていいって、親父も言ったじゃねえかよ!

留玖とはやっと恋仲になれたんだ! もう少し時間が──」


「そうか。互いに思い合う恋仲になったか……それは、酷なことだな」


親父殿は、わめき散らす俺に淡々とそう言って、


ようやく俺は、

何か──嫌な予感がした。
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