恋口の切りかた
【円】
留玖に勝てないという劣等感はどうにもならないままだったが、
それでも留玖のためだと俺は祝ってやって、
桜の花の下で、変わらず彼女を愛しく思う気持ちを確かめて、
しかし、彼女のためだと思った馬鹿な俺の判断は、とんでもない事態を招いた。
江戸から戻るなり、親父殿は俺を部屋に呼びつけて、
留玖の城詰めのことを怖い顔で問いただしてきた。
「どういうことだ? 円士郎、儂は留玖の奥への出仕を許した覚えはないぞ」
「な──」
俺は驚いて、
「何言ってんだよ。城からの使いが、江戸の親父に承諾を得たと言ってきたぞ?」
「書状が届いておらんのか?
儂はお前に、留玖の未熟な腕で指南など許さんというのが鏡神流当主の意だと奥には伝えよと、そう書いて送ったはずだ。
当然、城の連中にも同様の書状を書いて送った」
どうなってんだ……?
親父殿の言葉に、俺はぼう然となる。
「ふむ。儂の文を握りつぶした者がおるということか。良い度胸だな」
親父殿は不機嫌そうに、顎をごりごりと擦った。
「だが──円士郎。
貴様、儂の言がなかったとしても、留玖を城の奥に出仕させるとはどういう判断だ?」
「いや、だって、強い要望で断れなかったし、
留玖の腕なら問題ねえって、先方から言ってきやがったんだぜ?」
「それで、貴様は言われるがままに許したのか」
親父殿は嘆息して、
「この馬鹿者が!」
と吐き捨てた。