恋口の切りかた
話を聞くうち、俺の中で怒りが頭をもたげた。

「何だよ、そりゃ……!
このこと──親父も母上も知ってて──俺には黙ってやがったのかよ……!」


「申し訳ございません!」


俺の言葉に、冬馬は土下座した。


「兄上を今日まで欺き続けたこと、申し開きのしようもございません!」


俺は畳みに頭を擦りつけて詫びる義弟を睨みつけた。


「俺が怒ってんのは──そういうことじゃねェ!」


「え……?」


冬馬が顔を上げて、


「親父、冬馬、二人とも──俺が冬馬の過去を知ったからって、冬馬を蔑んだり、つらく当たったりすると思ったのかよ!

俺は、その程度の人間だと思われてたってことか!?」


俺の言葉を聞いて大きく目を見開いた。


「ふざけんな! 生まれがどうでも──俺はずっと冬馬を大切な弟だと思ってきたし、それは今も同じだ!」

「兄上……」


冬馬の声がまた震えて、


「貴様を侮ってのことではない」


口を開いたのは親父殿だった。


「羅刹丸を養子とすることに決めた時、奈津がそうしようと言い出したのだ」

「母上が?」

「そうだ。血の繋がりがない羅刹丸のために、円士郎、実の子であるお前とは別の絆を持とうと。
円士郎が知らぬ秘密を三人だけで共有することでな」


俺はそう教えてくれた親父殿と、唇を固く結んだ冬馬を交互に眺めて、


「そうか……」


頷いて、微笑んだ。
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