恋口の切りかた
では、風佳と冬馬は──
「風佳とお前には、血の繋がりはなかったんだな」
俺と
冬馬、
風佳の間の
二人の関係に対する認識の違いに潜んでいた謎を、やっと理解できた。
冬馬が大河家からの養子だと聞かされていた俺は、二人を実の兄妹だと思っていたが──
冬馬は当然、風佳が実の妹ではないことを知っていて、
初めから大河家にはいなかった冬馬の記憶は風佳にはなく、だから風佳は冬馬を実の兄だとは思っていなかったというわけだ。
「良かったな。
だったら冬馬が結城家を継げば──風佳と夫婦になることには何の憂いもない」
俺が言うと、冬馬は喉をつまらせたような、うめきともうなりともつかぬ声を漏らした。
「兄上が残された書状の中に、私と風佳殿との関係を案じる内容が書いてあったと知って──私は居ても立ってもいられなくなったのです」
冬馬は真っ直ぐ俺の目を見据えて、
「私は!」 と、震えているがはっきりした声で言った。
「この十一年間、盗賊の生まれにも関わらず、
惜しみない愛情を注いでくださった父上と母上、そして兄上と家族でいられたこと、本当に幸せでございました」
その目に映る蝋燭の灯火が揺らめいて、光るしずくが冬馬の頬を伝った。
「あなたの弟になれたことを、心より嬉しく思っております。
生涯、私の兄上はあなた一人でございます」
俺は、かつてこの男が俺に対して口にした言葉の重みを改めて知った。
「俺もだ。
お前は俺の大事な弟だ『冬馬』。
昔も、今もな」
「風佳とお前には、血の繋がりはなかったんだな」
俺と
冬馬、
風佳の間の
二人の関係に対する認識の違いに潜んでいた謎を、やっと理解できた。
冬馬が大河家からの養子だと聞かされていた俺は、二人を実の兄妹だと思っていたが──
冬馬は当然、風佳が実の妹ではないことを知っていて、
初めから大河家にはいなかった冬馬の記憶は風佳にはなく、だから風佳は冬馬を実の兄だとは思っていなかったというわけだ。
「良かったな。
だったら冬馬が結城家を継げば──風佳と夫婦になることには何の憂いもない」
俺が言うと、冬馬は喉をつまらせたような、うめきともうなりともつかぬ声を漏らした。
「兄上が残された書状の中に、私と風佳殿との関係を案じる内容が書いてあったと知って──私は居ても立ってもいられなくなったのです」
冬馬は真っ直ぐ俺の目を見据えて、
「私は!」 と、震えているがはっきりした声で言った。
「この十一年間、盗賊の生まれにも関わらず、
惜しみない愛情を注いでくださった父上と母上、そして兄上と家族でいられたこと、本当に幸せでございました」
その目に映る蝋燭の灯火が揺らめいて、光るしずくが冬馬の頬を伝った。
「あなたの弟になれたことを、心より嬉しく思っております。
生涯、私の兄上はあなた一人でございます」
俺は、かつてこの男が俺に対して口にした言葉の重みを改めて知った。
「俺もだ。
お前は俺の大事な弟だ『冬馬』。
昔も、今もな」