恋口の切りかた
慌てて、清十郎から殿を守るように、腰の刀に手を掛けて殿の前へと走り出る。

「留玖……」

殿が後ろで呟くのが聞こえて、

清十郎が顔をしかめた。

「お前を巻き込みたくはなかったのに──まさか、このような最後の最後で、殿の同行を申し出るとはな」

清十郎は鼻を鳴らした。

「退(ひ)け、留玖。
女の身で、たった一人で──どうする気だ?」

言われて、心細さで体が震えた。


どうしよう、

どうしよう……


胸の中は不安で塗りつぶされて、


「留玖、よせ……もう良い」

後ろで殿が力無くそう言ったけれど、私は激しく首を横に振った。


私しかいないんだ……!

私が、しっかりしなくちゃ……


心の中で言い聞かせて、

私は涙が浮かびそうになるのを我慢して、刀を抜き放った。


周囲の家来の人たちの間に緊張が走るのがわかった。


「この私が取り押さえる」

清十郎が他の人たちを見てそう言って、刀を抜いた。

私は刀を構えて、

「お前と真剣の刃など合わせたくはなかったが、こうなった以上、やむを得ないな」

清十郎が、冷たい目を私に向けて刀を振りかぶり──


一気に間合いを詰めて斬りつけてきた。
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