恋口の切りかた
「べ……別人だ!」
清十郎が、私が思ったのと同じ言葉を口にして、
「別人?」
青文が──いや、伊羽青文としてそこにいる見知らぬ男が、やはりボソボソとしたくぐもった喋り方で言った。
「それこそ何の根拠あってのことか」
「確かに」と、頷いたのは菊田水右衛門だった。
「別人にしては──この男の立ち居振る舞いも言葉も、これまで我々が目にしてきた伊羽殿そのもの」
周囲の侍たちもヒソヒソと、
「あの槍の動きや構えは……」
「伊羽様の無想流槍術のものじゃ」
などと囁き交わした。
私もわけがわからなかった。
確かにこの人の構えも、侍たちを追い払った時の槍の振るい方も、以前目にした青文のものと何も違わなかった。
だから、覆面の下には金髪の若者の素顔があると信じ込んでいたのに──
「さすがに一国の家老を、他人が演じて演じられるものではあるまい」
菊田はトロリとした眠たそうな目のままそう言って、
「ふむ。噂には聞いておったが、このような素顔では──確かに覆面で隠すも道理、道理」
少しだけ面白そうに、
それでも気怠そうに、唇の端を吊り上げた。
他人が演じて──?
その言葉に私は少し引っかかって、
「そうか……そういうことかよ……!」
そばで円士郎が、私たちにだけ聞こえるような小さな声で呟いた。
清十郎が、私が思ったのと同じ言葉を口にして、
「別人?」
青文が──いや、伊羽青文としてそこにいる見知らぬ男が、やはりボソボソとしたくぐもった喋り方で言った。
「それこそ何の根拠あってのことか」
「確かに」と、頷いたのは菊田水右衛門だった。
「別人にしては──この男の立ち居振る舞いも言葉も、これまで我々が目にしてきた伊羽殿そのもの」
周囲の侍たちもヒソヒソと、
「あの槍の動きや構えは……」
「伊羽様の無想流槍術のものじゃ」
などと囁き交わした。
私もわけがわからなかった。
確かにこの人の構えも、侍たちを追い払った時の槍の振るい方も、以前目にした青文のものと何も違わなかった。
だから、覆面の下には金髪の若者の素顔があると信じ込んでいたのに──
「さすがに一国の家老を、他人が演じて演じられるものではあるまい」
菊田はトロリとした眠たそうな目のままそう言って、
「ふむ。噂には聞いておったが、このような素顔では──確かに覆面で隠すも道理、道理」
少しだけ面白そうに、
それでも気怠そうに、唇の端を吊り上げた。
他人が演じて──?
その言葉に私は少し引っかかって、
「そうか……そういうことかよ……!」
そばで円士郎が、私たちにだけ聞こえるような小さな声で呟いた。