恋口の切りかた
剣じゃない。

私が振るい続けたのは刀だ。



だから、私は捨てられた──



剣の道なく、ただ刀を振るい続けたから。


人を斬る行為を遊びのように楽しむ子供を──鬼が巣くってしまった恐ろしい子供を、おとうとおかあは捨てた。



「この鬼の子がァ──!」

私の足下でへたり込んでいた盗賊がほえて、血走った目で刀を振りかざし斬りかかってきた。


私は逡巡した。

初めて手にしてから一度も怖いと感じなかった刀という武器の重みを、ずっしりと手の中に感じた。


どうしよう、と思った。

目の前の敵を斬り殺すのは簡単だ。


けれど──


どうしたら……


エン、

エン、あなただったらどうするの……?


いつも見つめてきた背中が胸の中に浮かんで、無意識にそう問いかけて、


エンは、ここにはいない。

自分で立たなくちゃ──


私は自分に言い聞かせた。


そうしなければ、彼のもとには辿り着けない……!



持ち主がことごとく修羅になったという刀の直刃を見つめて──



私は盗賊の刀を弾き飛ばし、真っ直ぐ目玉を貫く突きを繰り出した。
< 2,152 / 2,446 >

この作品をシェア

pagetop