恋口の切りかた
けれど──

たとえ、

活人のために、
何かを守るために剣を振るったとしても──


「ふざけないでよ……っ!」

憎悪の声を上げて毒塗りの短刀を振りかざすおひさを見て、
私のほっぺたには、後から後から涙が流れ続けた。



刀で殺人を行うのは、こういうことなんですね、虹庵先生──。



自分の手の中にある武器の重たさが、やっとわかった。


それでも私にはまだ、刀を使って相手を退けることしかできない。


自分が作った血の海を見下ろして、小修羅丸を握りしめる。


──師範代、私は未熟者です。

こうして大勢で囲まれたり
己の命に刃を向けられたりしたとき──どうすれば先生が仰るように相手を制することができるのか、まだわかりません。


刃を向けてきた相手を斬るということは、
私に父親を奪われたこの少女が今手にしているように、新たに己に向けられる刃を生むことでもあるのだ。

その先に待っているのはきっと、誰かをずっと斬り続けなければならない修羅の道だ。



強くなりたいな、と思った。

もう一度、円士郎と一緒に、父上や虹庵から道場で学びたい。


もう、無理なのかな、エン……


もっと、
もっと、

私はあなたと一緒に強くなりたいよ──
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