恋口の切りかた
「てめえ──」

俺は、暗くて表情の見えない夜叉之助の顔を睨み上げた。

「どうして冬馬を……」

「どうして?」

はっ、と夜叉之助が短く息を吐いて肩を揺らし、笑ったのがわかった。

「十年ぶりに言葉を交わしてみて、ようくわかったからさ」

夜叉之助は、冬馬を斬った刀を着物の袖で拭って鞘に納めながら言った。

「そいつがこの俺にとって、何の役にも立たんということがね。
そんなモノはいらない」

だから斬った、と、血の繋がった実の弟のことをまるで物を捨てたように言う男に、俺は愕然とした。


「あの男も……闇鴉の六郎太も、そういう物の考え方をする人間でした。

周囲の人間は皆、己にとって役立つか否か……それだけ」


弱々しい声がして視線を戻すと、冬馬が苦しげに息をしながら口を動かした。


「兄上……申し訳ありません。

兄上を差し置いてこのような真似をした挙げ句にこの有様……しかし……私はどうしても、夜叉之助と一度、話がしたかったのです」


そう言って、
傷の痛みのせいだけではない様子で、冬馬は顔を歪めた。
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