恋口の切りかた
「彼が本当に、人の心のわからない無慈悲な賊であるのか……確かめたかった。

もしも確かめて……夜叉之助に人の心が残っていたら……兄上を陥れた男をどうしようというつもりだったのか……自分でもわかりません。

ですが──」


冬馬は奥歯を噛みしめて、冷酷に己を斬ってのけた実の兄を見上げた。


「十年ぶりにそうして言葉を交わしたこの男は──実の父親である、あの男に──闇鴉の六郎太に──そっくりの人間になっていた……。

だから──できることならば、私の手で……決着をつけようとしたのですが──この男の言うとおりです」


喘ぎながら途切れ途切れに言葉を口にする冬馬を、俺は黙って見つめていた。


「兄上の声を聞いた刹那、私は何の迷いもなく夜叉之助に立ち向かえると思った」

しかし、やはり甘さが残っていたということなのでしょう、と言って、冬馬は悲しそうに首を振った。


「刃が夜叉之助に届く間際、幼き日のことが脳裏に蘇りました。

最後の最後で、迷いが生じてしまった……」


「もういい。わかったよ、冬馬」


俺は冬馬に手拭いを持たせ、傷口を押さえさせて、

両手に刀を握りしめて立ち上がった。
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