恋口の切りかた
「どうしてお前、ここに……」

大きく見開かれた円士郎の目と、
視界の中に映り込む屋敷の中の光景とを、私は交互に見比べた。


入り口に立ちふさがった清十郎の背後。


薄暗い部屋の中、


畳の上にはどす黒い色が広がっていて──



足下から嫌な震えが這い上ってきた。

いつかも見た光景だ。



部屋の中にできた血溜まりの真ん中に、

私の──大切な弟が──……


冬馬が──



血だらけで倒れている。



「どうして……? なんで……冬馬が……」


私は手にした刀を落としてその場に座り込みそうになった。


「留玖、落ち着け! 冬馬はまだ生きてる」

円士郎がそう言って、

「なんで冬馬が……だと? そうか、留玖。お前は知らないんだね」

清十郎が冷たい声でそんな言葉を口にした。

「そこにいるお前の義弟はな、武家の人間などではない」

「え……?」

「お前の大嫌いな盗賊だ。この俺と同じね」


私は雨の中に突っ立って、ぽかんと清十郎の顔を見つめた。
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