恋口の切りかた
「だが──将来利用できるかもしれないと思ったから、十一年前は敢えてそのままにした。

俺はあの男から名を継いで、一味の新たな頭目となって──どうして一味がこの国で壊滅の憂き目にあったのかを調べた。

一味の下っ端が『上級武士の子供』を殺して、武家の面目を保つための隠蔽だとすぐに知れて……俺は頭目として、この国に報復してやると決めたのさ。

一味の連中に俺のことを認めさせて、いいように使うためには『先代の仇討ち』ってのは必要だったしね。

先代の頭目を斬った若い侍が、結城晴蔵という男だということや──そいつが剣術の達人で、この国随一の腕前を持っていると言われていることも、調べて知った。

だから初め俺は、奴が六郎太を葬ったのと同じように剣術で報復してやろうと思って、腕を磨くために殺し屋の下で剣を習ったんだがね」


そこまで語って、若い盗賊の頭目は肩をすくめて苦笑した。


「残念ながら、ある一定の次元から先は、武芸というものは才能に左右されるんだな。
俺の伸びしろは、幼い頃に見た結城晴蔵の腕に届く前に尽きた。

別に剣術にこだわる必要はない。
俺はすぐに剣を極めることは諦めて、別の方法を考えたんだよ」


私や円士郎と互角に剣を交えた男は、あっさりとそう言った。


「それで、結城晴蔵の養子になった羅刹丸を使おうと思った。

結城晴蔵には実の息子がいる。

羅刹丸の成長を待って──結城円士郎、貴様を破滅させて、盗賊の子である羅刹丸に結城家を乗っ取らせ、結城晴蔵をたっぷり苦しめてから、闇鴉に手を出したこの国自体を滅ぼしてやるつもりだったんだ」
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