恋口の切りかた
雨の中で、夜叉之助が低く笑った。


「やはり気に入らん男だな、結城円士郎」

そう言って、
出会ってからずっと俺に向けてきたのと同じ目で、夜叉之助は俺を見た。

激しい憎悪の目だった。


「こっちのセリフだ。

毒殺しようとしてくれたり、
謀反の濡れ衣を着せてくれたり──

ここまでしてくれたてめえは、武士の誇りにかけて絶対に許さねえ」


まんまと利用された脇差しを突きつけてそう言い返しながら、疑問を覚えた。

結城家の復讐のためとは言え、
さっきのこいつの話からは、俺や親父殿に対して六郎太を殺された恨みを抱いているというわけではないようだ。

しかし夜叉之助が俺に叩きつけてくる感情は、あからさまな憎しみだ。

六郎太を殺した親父殿への意趣返しというよりも、こいつのこれまでの行動の目的はこの俺のように思える。


「まあ、今となっては──彼女を殿様の側室にしてくれたことにだけは、感謝しておくけどよ」

冬馬の手当を終えてこちらを見ている留玖の姿を一瞬だけ視界の端に映して、俺は小さくそうこぼして、

「エン──」

部屋の中からどこまでも愛しい声が、懸命に何かを言おうとするように俺を呼んだ。


「留玖様、あなたはどうかそこで見届けてください」

俺は彼女にそう告げて、



「お喋りはこれで終いにしようか」

と、夜叉之助が言った。

「この国は滅ぼせなかったが──貴様を斬って復讐にしてやるよ、結城円士郎」
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