恋口の切りかた
殿様が盗賊に殺されて、
供をしていた者が切腹させられ、
盗賊は討伐されて──

殿様の替え玉に選ばれた子供は、菊田家から消えた。


この一つの事件を、青文は二つのニセの事件に分けることで巧妙に隠した。


「殿様が怪我をして、供の者が切腹させられた」という事件と、

「菊田家の子供が盗賊に殺され、盗賊が討伐されて──武家の不名誉を隠すためにこのことは家中でも秘密とされた」という事件と。


「てめえが十一年前の真相と思って辿り着いた家中の秘密こそが、本当の秘密を隠すために仕掛けられたニセの情報だったんだよ。

真相はその更に裏にあったってこった」


「──っそのことをこの俺が知っていれば……」


「この国を滅ぼすのはもっと楽だっただろうぜ。

だが──藤岡のジジイも、菊田のオッサンも、てめえにはこの秘密を漏らさなかったんだろ?」


冷たい雨に打たれている男を眺めて、俺は小さく溜息を吐いた。


「皮肉だな。
菊田のオッサンは、てめえや冬馬の父親とは違ったってことだ。

実の息子を──てめえに唆されて裏切るような真似はしなかった」


目を見張っている盗賊の頭目を、俺は睨み据えた。


「てめえがたった今、実の弟と一緒に斬り捨てた──家族の絆(きずな)ってものが、

この国を守り、

てめえの計画を失敗に終わらせたんだよ!」
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