恋口の切りかた



遠い遠い日──

今でも昨日のことのように思い出せる、幼い頃のあの日──


ずっと遠くから見ていた漣太郎と、仲良くなったあの日に、彼が口にした言葉が耳の奥でこだまする。




「一番好きな花は何だ?」

「桜か」

「桜はいいよな。うん、武士の生き様だ」





まだ、人を愛する気持ちを知らなかった。


彼と恋に落ちることも知らなかった。


その先に──こんな運命が待ち受けているなんて、


何も知らなかった──遠い日の、

無邪気な子供同士の会話……。
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