恋口の切りかた
「売られた子供はどうなるか知っておるか?」

「遠くの町に連れて行かれるって……」


それはいつか漣太郎と交わした会話の続きの話──

──私も知らない話だった。


「遠くか。まあ、ぬしの村などならこの城下町ということもあるじゃろうが……

ここらなら江戸に連れて行かれることもある。

そうしてな、売られた娘は遊里に入れられ、女郎として働かされる」


「えっと、その、遊里というのは……」


「遊里は、色を売り買いするところじゃ」


よくわからなかった。


「男が女を一夜だけ買って、いつわりの恋で遊ぶ里じゃ」


コイで──遊ぶ?


「コイ」というのは……、

庭の池にいるコイではなくて、「恋」のことなんだろうけれど……。


「遊女は、好きなフリ、ほれたフリをして男を楽しませるが仕事──

だが、フリをくり返すうち本気になることもある。
もっとも、遊女が本気で好いたほれたなど、痛い目を見ることがほとんど。

わっちも──たくさん痛い目を見んした……」


りつ様は、きれいな目を細めて少しさびしそうな顔をした。
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