恋口の切りかた
留玖は泥に汚れた右手の甲で、目元を隠して、


「前にね、虹庵先生に道場に残された時──

私は、木刀では先生に勝って、

真剣では勝てなかった……」


留玖はヒクヒクとしゃくり上げて、俺が知らなかったそんなことを語った。


「その時に、虹庵先生からも言われた。

私の剣は、人殺しのための剣だって──。

私が、私の剣を振るえるのは──手にした武器で相手を殺すための動きをしている時だけ。

殺さないように──本気で剣を振るうことなんて、私にはできない」


だからね、と留玖は目を押さえていた腕をゆっくりと外して、

真っ赤に充血した双眸で俺の顔を覗き込んで、


「こんなことしたって、エンを止められないって……わかってた」


俺は大きく目を見開いて、彼女を見下ろして──


「エン、夜叉之助を斬って……私はもう、誰も殺したくないと思った。

人を殺さないために、私はもっともっと強くなりたい」


留玖が細い腕を伸ばして、俺の頬に触れた。


「エンとなら、私はきっとまだ強くなれるよ……。

エンと、まだまだ剣の腕を磨きたい」
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