恋口の切りかた
男の口から飛び出した予想外のセリフに、私は首をひねった。


「……父上に? 何のためにですか?」

「おお、結城様のお子か。
たのむ! ここに晴蔵殿を呼んでもらえまいか」


相変わらず暗がりで表情までは見えないけれど、男はかなりせっぱつまった口調だった。

しかし会わせろといわれても、父上は今、出かけていて屋敷にはいないのだ。


「人殺しの罪人を父上に会わせるわけにはゆきません」

当主が不在であることを告げるべきではないと思って、私は慎重に言葉を選びながらそう答えた。



「人殺しの罪人?」


男はやや不思議そうな声でそうつぶやいて、


「人殺しの罪人……そうか、そうだな。確かに私はもう、そう呼ばれても仕方がないのだろうな」


……?

何だか変な言い方のような気もするけれど……。


「それに、父上からはあなたを見つけしだい、斬るようにと言われています」

「な──なんだと……!?」


男ががく然としたような、震える声を出した。

私は刀の柄にかけた手に力を入れて身がまえる。
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