恋口の切りかた

斬った?

りつ様の話ではたしか、刺し殺したって聞いたような覚えがあるけれど。


「しかし肝心のもう一人が斬れず……顔を見られて──」

──!?


「留玖殿」と、混乱する私に向かってりつ様が静かに言った。


「この者は、留玖殿が斬るように言われた、捕り物騒動の罪人ではありんせん」

「えっ」


って、だれ!?

ぽかんとなる私の前で、


「こちらへ」と、りつ様にうながされ、男は襖の奥の暗がりから行灯の明かりの中にのっそりと出てきた。
< 249 / 2,446 >

この作品をシェア

pagetop