恋口の切りかた
「なんだよ……そりゃ」


離れに落ちた静寂をやぶって、突然障子の向こうの庭から声がした。

続けて、バン! と庭に面した障子が開いた。


青白い月明かりの下に、
鞘に納めた刀をにぎって、怒りの形相(ぎょうそう)の漣太郎が立っていた。


「レンちゃん……!」

「漣太郎殿!?」


私とりつ様が声を上げた。


「今の話、本当かよ!? 城代家老暗殺だと──!」


漣太郎は精いっぱい押し殺した声でどなりながら、離れに上がってきた。


「どういうことだ!! あのクソ親父、裏でいったい何してやがる!」

「レンちゃん、何でここに……」

「捕り物騒動の罪人が商家の蔵ん中で見つかって捕まったって聞いたから、もう心配ねえってお前に伝えに来たんだよ。

そしたら……」


漣太郎は奥歯をぎりっと鳴らした。


「ばかやろう!
家老の闇討ちに失敗して、言いわけなんて立つハズねえだろうが!

もしも荷担してて、それがバレたら結城家も終わりだ!

夕方に突然、伊羽家から使いが来て変だと思ったが──あの親父、今ごろ家老に疑われて詮議(*)でも受けてるんじゃねーのか!?」

「えっ……」


そんな──。

とんでもないことになった。



(*詮議:せんぎ。取り調べ)
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