恋口の切りかた
「おい、あんた」
と、漣太郎は畳の上でうずくまっている堀口青年に言った。


堀口は、血の気の失せた顔を漣太郎に向けた。


「結城様の、御子息か……?」

「先法三家筆頭結城家、当主結城晴蔵が嫡男(ちゃくなん)、結城漣太郎だ」


堂々とそう名乗る漣太郎は、いつもとは違ってしっかりして見えて、
自分と一つしか変わらない子供とはぜんぜん思えなかった。


「顔を見られたって言ったな。誰にだ?」

「……提灯(ちょうちん)持ちと、駆けつけた家人と、おそらく御家老本人にも」

「本人にも見られてんのかよ」

堀口の答えを聞いて、漣太郎はチッと舌打ちした。

「ごまかしようもねーな。

親父がみどってくるまで、あんたの身がらはここで預かる。
うちの親父が黒幕で、あんたに命じてたんなら、なんとかしてやりてえけど……

場合によっては、家老に引き渡すことになるかもしれねーから覚悟しとけよ。

失敗した上に顔見られたあんたの失態でもあるんだからな」



即座にそんな判断をしてみせた漣太郎に、私は驚いて、

そう言えば、私の時も──漣太郎が助けてくれたことを思い出して、


普段はただのワガママな子供なのに、いざという時にはたよりになるなぁ、なんて思って──





堀口青年から注意がそれた。





その一瞬──





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