恋口の切りかた


「お子たち、動かれるな!」

思わず鯉口を切る私たちを見て、堀口がするどく言った。




私はこの若者の動きに慄然(りつぜん)となる。

村を襲った盗賊たちとは、身のこなしがまったく違う……!
状況を、自分に有利な状態に持っていく力も。


今の一瞬で堀口がやったことは、二つだけだ。

私をつきとばしてりつ様をからめ取った。

だが、私をつきとばす動きだけで私と漣太郎二人の動きは封じられ、
りつ様をからめ取られて、そのあとも動けなくなった。




漣太郎との勝負の中で、私が学んだことであり
勝負を制する時にどう動くかの基準となっているもの──

それは、最小限の動作で、最大の効果を得られるよう動くということだった。




道場稽古と違って実際の勝負では、動き初めてから決着が着くまでの時間は短いことが多い。

その与えられた時間で人間にできることは少なく、
単純な数個の動作で勝負は決まってしまう。

だから、相手と自分の動きを予想しながら、状況の中で最適な動きを見つけ出す。




堀口青年は、私の目の前でまさにそれを見事にやってのけた。


彼は大河道場の門下と言っていた。

これが、武芸の心得のある大人の──こういうときの──

実戦の動きなんだ。
< 260 / 2,446 >

この作品をシェア

pagetop