恋口の切りかた
喜三太の死体を前にして、銀治郎の子分たちは悔しそうに歯噛みした。


「くそっ、あいつら」

「ヌエの大親分が死んだって知った途端に……」

「おい! その話は──」


何か口を滑らせたらしき子分の一人を、別の子分が焦った声を出して遮った。


ヌエの大親分?

聞いたことのない話に、俺は眉根を寄せて──




ここで、やっとヤクザたちから目の前の少女へと意識が戻った。




「る、るるる留玖!?
ゆ、遊水、てめッ、何して──」


未だに留玖を抱き寄せたままの遊水に指を突きつけ、俺は半ば恐慌状態になった。


「え、エン!? こ、これは……違っ……」

遊水の腕の中で留玖が藻掻いて、

「──ああ……こいつは失敬」

遊水が、心ここにあらずという青白い顔のまま、留玖を放した。

「し、失敬じゃねえよ!」

俺は大急ぎで留玖の手を引っ張って遊水から引き離す。

「あんた留玖に何を……!?」

いつもなら軽口の一つや二つ返してくる遊水は、この時は黙ったままで──

「おいッ!」

俺は頭から冷や水をぶっかけられたような気分になって、遊水につかみかかった。
< 746 / 2,446 >

この作品をシェア

pagetop