恋口の切りかた
「わ……かんないよ」

私は胸を押さえて、

何だかぐるぐる回りそうになっている頭で
無理矢理に答えを引っ張り出した。

「エンは、女の子にモテるもんね。
だから、だから私のこともからかって──」

「本気でそう思ってんのか?」

「お、思ってるよっ」


きっと、そうだ。

期待なんかしちゃいけない。

期待なんて──

そんなことは──許されない。


私は頑なに、自分の心が見えないフリをして、




「ふーん」と、私の顔を覗き込んだ円士郎がいたずらっぽい目つきになった。



な、なに?



「わかんねーなら、仕方ねえな」


円士郎は肩をすくめて再び歩き出した。

私は正体不明の焦燥から解放された気がして、ホッと息を吐いて、


円士郎は肩越しに振り返って、ニヤッとした。




「だったらこれから一年、ゆっくりじっくりたっぷり教えてやるよ」




満開の桜の下で宣戦布告のように言った円士郎に、


何言ってるの円士郎──!?


私はひたすら混乱してからまった頭と胸を抱えて固まった。

< 760 / 2,446 >

この作品をシェア

pagetop