恋口の切りかた
俺が聞くと、銀治郎は不思議そうに答えた。


「それがでさ、肝心の鵺の胴体である狸については、あっしらも知りやせん。

まあ、全部そろってねえとまずいワケでもなし。いないのかも知れねえなァ」


ふうん。

バケモノの胴体は無しか。



「その二代目の大親分ってのも、姿形が見る者によって違うのか?」


ここで、虎鶫は歯切れの悪い調子になった。


「わかりやせん」

「ってどういうこった?」

「あっしも二代目にはまだ、会ってねえんでやすよ。
二代目の言葉は、狒狒の女が伝えに来るばかりで──

女の話じゃ、白輝血の一件が片づくまでは大親分は姿を見せない。

杯を受けたくば、まずは先代への恩を虎鶫が示してみなと、こういうんで」


それで、新しい大親分の信用を得るために、
恩知らずの白輝血と真っ向から喧嘩中ということのようだ。


「ただし、大親分の背には、鵺の証として真紅の鵺の彫り物があるんでさ」

赤い──イレズミか?

「先代もそうでやしたが、二代目も全く同じ彫り物を先代から継いで背負ってると聞きやす」


つまり──

鵺が何者にせよ、背中の彫り物を見れば、一発でわかるということだな。


真紅の鵺なんて、そんな目立つものを背負ってる奴は他にはいないだろう。
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