恋口の切りかた
「虎と狒狒です」


この昔の盗賊仲間が大親分の手先となって、
ここら一帯はうまくまとまっていたのだそうだ。


「それがなんでまた大親分が死んだ途端にこうなるんだ?」

「鵺の手足が裏切りやがった」


手足というと──


「虎か?」

「旦那もよく知ってる暗夜霧夜ですよ」


銀治郎は忌々しそうに吐き捨てた。


「あの野郎──先代には盗賊一味の頃からの恩義があるだろうに、

カガチを兵五郎が継いでからやたらと奴の所に出入りしてやがったが、
大親分が死んで、完全に掌返して兵五郎につきやがった」


噂じゃあ、兵五郎をけしかけたのも霧夜の野郎だって話だと貸元は言った。

元々は鵺の手足として、汚れ仕事を一手に請け負っていたらしい。


へえ、あいつが──虎か。


「狒狒ってのは誰だ?」

「ああ、こいつは女でさ」

「女?」

「女盗賊として鵺の下で知恵を貸してた頭の切れる女でね、
素性は知れねえしどこに潜んでるかもしれねえが、片目の女です。

あっしも何度か会ってるが、こればっかりはわかりやすい特徴だ」


成る程。
知恵の回る──鵺の頭というわけだ。

片目の狒狒ね。


ん?


「狸はいねえのか?」
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