恋口の切りかた
それから、鬼之介に
こんな風に釘を刺すような言葉を放った遊水の態度に意外な気がした。

遊水が鳥英のことを気に入っているのは知っていたが、所詮遊びの一つだろうと思っていた。

遊水は普段、他の男が女にちょっかいを出してきたとしても、むしろそれを面白がって眺めているような奴だから、
そこでいちいち構うような真似はしないのだが。


ふうん……?


「な、何だ……あんたの女か?」

もたもたと身を起こしながら、鬼之介は大急ぎで弁解した。

「それならそうと早く言え。
ぼ、ボクはそうとは知らなかったからだな……あんたのものに手を出す気はない! 断じて無いぞ!」


相変わらずの怯えようだった。


話を聞いていた留玖が、えっ? と言って頬を染めた。

「『あんたのもの』って──」

硬直している。


なんでそこで留玖が赤くなるんだ?

可愛い反応だよなァ、と俺はにやけて、


鳥英が可笑しそうに、

「そうだったのか?」

と遊水に言った。


ふ、と遊水が翠玉の双眸で鳥英を流し見て白い口元を吊り上げた。

「違ったのか?」


「初耳だ」

澄ました顔で答えながらも、鳥英は何だか嬉しそうだ。


じゃあな、と長屋を出ていく遊水を見送って、俺はこの二人が羨ましくなった。



クソ……俺も堂々と留玖に「俺のもの」とか言いてえよ。
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