恋口の切りかた
「知り合いっつっても、芝居の客と役者としてだけどな」


今の鈴乃森与一という女形は、「凄い美人の男の人」で──


──城下町では大人気の役者だ。


初めて見た時に私が、あの「女の人」が綺麗だと勘違いして喜んでから、
円士郎は銀治郎親分の賭場で儲けた金子なんかを結構気前よくこの女形に使うようになって、

一緒の時はこうして楽屋に私をつれてきて、与一に会わせてくれる。

更に、円士郎自身もこの鈴乃森与一という人の演技や芝居がいいと言って、やたらと気に入っているようで、

贔屓(ひいき)というほどではないかもしれないが、
おかげで円士郎は、与一とはすっかり馴染みだった。

確かに、芝居小屋の中のことを聞くなら、与一のような知り合いがいるのは心強いかもしれない。



「それで、あたしに聞きたいことってのは何だい?」

しばらくして戻ってきた鈴乃森与一は、
化粧を落としても、切れ長の瞳に整った面差しの美青年だった。

もう二十代後半だという話だけれど、どう見てもせいぜい二十歳過ぎにしか見えなくて若々しい。

「芝居の仕掛けのカラクリについてだ」

と、円士郎は切り出した。
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