恋口の切りかた
【剣】
隼人が言う「乱捕り稽古みたいなやつ」というのは、私と円士郎が幼い頃から繰り返してきた勝負ごっこのことだ。
殴る蹴る投げ飛ばすも含めて──木刀を武器にした何でもありの喧嘩勝負。
道場稽古とは別に、私たちは今もこの勝負を繰り返していた。
最近では、道場稽古よりも更に円士郎の動きに思い切りが足りなくて、私が勝ちっぱなしなのだけれど。
「いいですけど……危ないですよ?」
私は怖ず怖ずと頷いた。
最近は私も円士郎も寸止めや手加減が上手くなったので、事故は少なくなったのだが、この勝負ではこれまでに私が一度、円士郎が三度──骨折に至る怪我をして、虹庵や父上にこっぴどく叱られている。
「勝負は一本。俺が『それまで』つったら、二人とも絶対に動きを止めろ」
円士郎が判定役を請け負ってくれて、
私と隼人は稽古が終わって門弟さんたちが帰っていった後の道場で、木刀を手に向かい合った。
私も円士郎と同様に二刀流については一通り修めているけれど、
刀にしても木刀にしても、女の身で片手でそれぞれ一本の刀を振るうというのはあんまり合理的じゃあない。
子供の頃ならばともかく、成長した円士郎と私では膂力が全く違う。
片手でも十分に威力のある剣が繰り出せる円士郎と違って、
腕力で劣る女の身である私は、両手で構えたほうが圧倒的に強く鋭く速く刀を振るうことができる。
というわけで、いつもどおり私は一刀を構え、
小太刀術の達人だという隼人は、小太刀の長さの木刀を手にしていた。
「始め!」と円士郎が言って、
私は正眼に構え、隼人は構えを取らず無形の位で立っていた。
こちらを見据える彼の目は完全に本気だ。
隼人が私のことを凄く心配してくれていて、捜査に加わることを反対しているのはわかったし、嬉しかったけれど、
私には正直、彼がこんな勝負に手を出してまで何を案じて、頑なに私を彼らの手伝いから遠ざけようとするのかよく理解できなかった。