恋口の切りかた
「身分!?」

鬼之介はパカッと口を開けて、「おーそうか身分が釣り合わねえ」と俺は手を叩いた。

「そーだそーだ、諦めろ鬼之介。残念だったな」

「うぬぬぬ……おのれ、身分か……それは、考えたことがなかったな……」

「俺も今気がついた。隼人、あんたいいこと言うじゃねェか!」

まあ、留玖が農民の出でも関係なく俺の嫁にしてもいいと条件を出してきたあの親父殿のことだから、腕さえ立てば身分は無視して留玖を嫁がせる可能性はある気もするのだが。

喜ぶ俺と、うなる鬼之介とを見て、
隼人は「有り得ねー」と頭を振った。

「真っ先に考えるトコだろそこは。俺だってあの時道場で、本気で自分を候補だと思って名乗りを上げたワケじゃねーし」

「何!? 冗談だったのかよ、アレ」

俺は少しホッとして、

「当たり前でしょうがよ。本気にするかフツー」

隼人はあきれ果てた。


俺と鬼之介は顔を見合わせて、「ふうむ」と鬼之介が感心した声を出した。

「どうやら我々はいささか常識というものに欠けているようだ。事件を調べるなら、秋山殿のような常識人の目は必要かもしれんな」

「ああ。確かにな」

俺も頷いてケラケラ笑った。

「いやあ、お前が下役になってくれて助かるぜ」


そんな俺たち二人を前にして、

「何なんだよ、この孤立無援状態はよ……!」

隼人は思い切り嫌そうな顔になって頭を押さえた。
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