恋口の切りかた
「あれは、ボクがまだ十かそこらの──子供の頃のことだった。
何かの用で、家族に連れられて遠出をした折り、ボクは一人の若い男に出会った。
女のような顔をした、亡霊のように青白い肌の若い男で、異国の着物を着ていた。
男はボクに、
信じられないかもしれないが自分は戦国の世の終わりから、かれこれもう百年以上はこの世にいるのだ、
かの豊太閤殿下(*)や東照神君(*)にも、生前に直接お目見えしたことがあるのだと、
何やら懐かしそうに目を細めて語った。
若い男だった。
齢はどう見ても二十代というところ。
百歳以上の老人には見えなかったがな。
そして更に彼が言うには、
自分はかつて、先の世から時を遡ってやってきた者たちに会ったことがある。
そしてその者たちから未来に何が起こるかを聞いていて、先の世というものを知っているのだ、と」
「そいつは──ひょっとして、前に鳥英の長屋でお前が言ってた奴のことか?」
鬼之介の話の途中だったが、俺は思わず口を挟んで、
そうだ、と鬼之介はあの時と同じように、相変わらず何かに怯えている様子で首肯した。
「ボクはまだほんの子供だったが、それでもそんな与太話を信じたわけではなかった。
先の世を知っているなら、何かこれから起きることを当ててみせろと、男にそう言ってみたんだな。
そうしたら──」
(*豊太閤殿下:豊臣秀吉のこと)
(*東照神君:徳川家康のこと)
何かの用で、家族に連れられて遠出をした折り、ボクは一人の若い男に出会った。
女のような顔をした、亡霊のように青白い肌の若い男で、異国の着物を着ていた。
男はボクに、
信じられないかもしれないが自分は戦国の世の終わりから、かれこれもう百年以上はこの世にいるのだ、
かの豊太閤殿下(*)や東照神君(*)にも、生前に直接お目見えしたことがあるのだと、
何やら懐かしそうに目を細めて語った。
若い男だった。
齢はどう見ても二十代というところ。
百歳以上の老人には見えなかったがな。
そして更に彼が言うには、
自分はかつて、先の世から時を遡ってやってきた者たちに会ったことがある。
そしてその者たちから未来に何が起こるかを聞いていて、先の世というものを知っているのだ、と」
「そいつは──ひょっとして、前に鳥英の長屋でお前が言ってた奴のことか?」
鬼之介の話の途中だったが、俺は思わず口を挟んで、
そうだ、と鬼之介はあの時と同じように、相変わらず何かに怯えている様子で首肯した。
「ボクはまだほんの子供だったが、それでもそんな与太話を信じたわけではなかった。
先の世を知っているなら、何かこれから起きることを当ててみせろと、男にそう言ってみたんだな。
そうしたら──」
(*豊太閤殿下:豊臣秀吉のこと)
(*東照神君:徳川家康のこと)