恋口の切りかた
「果心居士と来たかい!」と遊水がぺしりと額を打った。

果心居士と言えば、戦国の世に暗躍したという、実在したのかどうかも不明な妖しい幻術使いの謎の人物のことである。


うーん、詰めがイマイチだよなァ……と俺も思ったのだが、

腕に重みを感じて見下ろすと、留玖がうるうるした瞳で俺にしがみついていたので、俺は満足した。


「その話が本当だとすると、鬼之介殿は、その者からこの先の暦も聞いて知っているということか?」

冬馬が真面目にそんな質問をして、

「聞きたいか?」

鬼之介は引きつった顔で笑った。

「聞きたいのか? 今ならば、ボクの話を貴様らはただの与太話で片づけられる。
しかしもしもボクが男から聞いたこの先の暦の名を語り、それが当たっていたら……どうするのだ?」

「…………」

しん、と部屋の中が静まり返る。


「聞きたくないっ! 聞かなくていいっ」

留玖がふるふると首を横に振りながら悲鳴を上げた。


ほほう?

俺は少し感心した。
イマイチのオチかと思ったが、鬼之介もなかなかやるな。


そうそう、と思い出した様子で口を開いたのは鳥英だった。

「この場で言うかどうしようか迷ったが、今の話が出たのでついでに報告しておくと──調べるよう頼まれていた物質の件、調べがついたぞ」

突然、話が現実的な方向に動いて、俺は思わず腰を浮かせた。

「本当か!?」

「ああ」

鳥英は、食い入るような視線を鳥英に注ぐ鬼之介を一瞥し、行灯の青い光に照らされた美しい横顔で少し口の端を持ち上げるようにして苦笑した。

「それが……まあ、ちょうど怪談じみた不思議な話になるのだが、この場で話しても良いものかな」

俺は風佳や冬馬を見て、「ああ」と頷いた。

「別に構わねえぜ」
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