君があたしにくれたもの
「「あのっ」」
二人の声が重なった。
「あ、えと、先どうぞ」
あたしはまた恥ずかしくなって、下を向いた。
「えっ、じゃあ、あの、どしたんすか?」
そんなあたしを見て、彼は遠慮がちに聞いてきた。
“どしたんすか?”
って言われても…
何が?

「あの…。何がですか?」
彩夏は困惑しながら聞いた。
すると彼は、さらに困った顔をして、苦笑いしながら言った。
「あの…泣いてるっすよね」

「あ…。」
あたしは慌てて顔を隠した。
そうだ。あたし泣いてたんだ。
気まずい空気が二人を包んだ。
そして、そんな空気を先に破ったのも彼の方だった。
「…ていうか、今日球場にいたっすよね??」
「え…??う、うん。いましたけど」
すると彼はポケットから、しわくちゃになったハンカチを取り出した。
それを見て彩夏は「あっ」と声をあげた。
「ハンカチありがとうございました!
彼は白い歯を見せてはにかんだ。
球場で泣いていたあの男の子だった。
「びっくりしたー」
あたしは驚いた顔で彼を見上げた。
「あははっ(笑)びっくりしたんはこっちっすよ(笑)」
ちょうどその時電車が来た。
「とりあえず乗ります(笑)??」
「うん(笑)」




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