【短】涙が出るほど好きだった





「ねぇ、お兄ちゃん…。」



「…んー!?」



バイクの音だけが鳴り響く夜の道路で

ぽつりと言った。




「なんで人の心って動かせないのかな。」




「…はぁ?」




どうせ聞こえてないと思っていたけど、

お兄ちゃんには聞こえていたみたい。




「人間が臆病だからじゃねーの?」



「え?」




「人間が臆病で、心を開くのが難しい動物だからじゃねーの?」




「…ん。」




「…柚姫、やっぱり何かあったんじゃん。」



「…お兄ちゃん、ありがとう。」



「はぁ?」




「あたし、やっぱり開かせたい。」




「え?」




「奏くんの心!」




そういってお兄ちゃんの背中にをギュって握った。



お兄ちゃんがお兄ちゃんで

ずっとそれは変わらないと思ってたから。





「…き。」



「え?」



「……き。」




「何?」






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