揺れる、山茶花
「お姉さん」
山茶花の根元に胡座をかいている赤鼻が、にこりと微笑んだ。
あ、えくぼ。
…赤鼻は可愛い。
「こんにちは」
来てしまった。
面接をサボって。
来てしまった。
大人がやる事じゃない。なにをしてるんだ、と赤鼻を見て今更後悔する。
今更、遅いけど。
「今日も来てくれるんだろうなって、思ってた」
にこり。
えくぼの可愛い赤鼻が、私の腕を引く。
スキンシップが多いお子さまだ。
他人に躊躇いもなく触れられるのは、愛されて育った証。
悩みがなさそうな顔。
羨ましい。
名前を尋ねると、名前なんてなんでもいいよ、好きに呼んで、と大変非友好的な返事が返ってきた。
「私に名前は教えられないっていうの」
無意識に操縦されたようにこの山茶花と赤鼻に会いに来てしまった悔しさから、つい子供滲みた事を口にした。
可愛いえくぼはそのままに赤鼻はくすりと笑う。
馬鹿にされたみたいだ。