雨に恋した華
それから1時間以上が経っても、彼が席を立つ気配は無くて…


さっきからずっと緊張したままのあたしは、まだ何も行動していないのに少しずつ疲れ始めていた。


千晶の言葉のお陰で、さっきまでは何とか頑張れそうな気がしていた。


それなのに…


時間が経つに連れて、すっかりその自信を失くしてしまっていた。


「ねぇ、千晶……。あたし、やっぱり無理かも……」


あたしが声を潜めて弱音を吐いたのと同時に、ずっと本を読んでいた彼が静かに立ち上がった。


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