グリンダムの王族
言いながらアーノルドがリズから離れた。
解放されたリズはゆっくりと体を起こした。

呆然としたまま乱れた服を引き上げ、肌を隠す。
その手も体も震え続けている。

アーノルドは改めてリズを見ると、「こんな格好してるから侍女だと思って、、、」と言った。

ラルフは頷くと、「無理もない。もとは平民だ」と返した。

リズは2人の言葉など聞こえていないように体を震わせている。

「側室ねぇ、、、」

アーノルドは言いながら、じっくりリズを観察した。

「譲ってもらおうかな」

酔いのせいで、ずいぶん軽々しいことを言っている。
それでもリズを凍りつかせるには充分だった。
目を見開いて固まっている。1度簡単に譲渡された身なので、全く冗談には聞こえないのだろう。

ラルフはそんなリズを見て苦笑した。
そしてアーノルドに目を向ける。

「譲ったら、何かこちらに利益があるのかな?」

ラルフの冷静な目がアーノルドを見ている。
アーノルドは頭を掻くと、「利益ねぇ、、、」と呟く。

ラルフはふっと笑みを浮かべた。

「―――それによっては考えよう」

リズの怯えた瞳がラルフを見る。
ラルフの冷たい視線がリズを射抜く。

アーノルドは困ったように、「利益かぁ」と繰り返していた。

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