グリンダムの王族
カインは言葉を失くした。

「カイン」

ラルフが口を開く。

「女に振り回されるな。
むしろ利用しろ。
お前は王族なんだぞ。
リズに溺れるくらいなら、俺の側室と遊んでろ」

一方的な兄の言葉に、カインは顔をしかめた。
反論したいけれども、できないのが歯がゆいのだろう。
表情だけで兄に反抗しているように見える。

ラルフはふっと笑みを浮かべた。

「いいな。
あの子を正妃にしようとか考えるなよ。
お前の正妃は俺が決める」

それは以前に一度言われた言葉だったが、カインは改めてその意味を理解した。

”正妃ならいざしらず、側室だぞ。
得る物があるなら喜んで譲る”

カインは何も言えずに目の前の兄を見ていた。

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